大川市は家具生産高日本一!室町時代から続く、伝統と歴史ある職人メイドの大川家具の魅力とは?
「家具の街」として、九州はもとより日本全国のインテリア好きから親しまれている大川市。その歴史は480年以上に及び、室町時代まで遡ります。大川市はなぜ古くから「家具の街」として栄えてきたのでしょうか。
今回は、大川家具の歴史やその魅力について、大川市役所企画課地方創生推進係の石橋広通さんにお話をお聞きしました。
筑後川の豊かな水源が生み出した「大川家具」のルーツ
——大川市はなぜ「家具の街」と呼ばれるようになったのでしょうか?大川家具の発祥の起源や歴史について教えてください。
石橋 大川市が「家具の街」として栄えた理由は、大川市が川と海のちょうど境目にあることが関係しています。古来より、潮の干満を利用した筑後川水運は重要な役割を持っており、大川市は大きな港町として栄えていました。筑後川と有明海の境に位置する大川市は、船の乗り換えや休憩場所に適しており、大川の港には、多くの船と熟達の船大工たちが集住していました。
——筑後川の物流機能が、大川の繁栄につながっていたのですね。船大工さんたちが、家具づくりを行うようになったのにはどんなきっかけがあったのでしょうか?
石橋 昔から、筑後川は流域の物流に大きな役割を果たしていました。木工に必要な資材も日田市からイカダで流していました。その木材を使って船や水車、明治期に汽車も作っていたようです。大川市の船大工は技術力の高さは有名で、九州中の藩から船の製造を請け負っていたと言われています。
中でも船大工がたくさん住んでいた榎津に、榎津久米之助さんという方がいました。久米之助さんは、12代将軍足利義晴に連なる榎津遠江守の一族で、遠江守が亡くなったあと、1536年に大川市に寺を建立。そこに集まった船大工たちに技術を活かして「指物」を作るように伝えました。指物とは組子のように、釘を使わずに木材だけを差し合わせて作る箱や家具のことです。このときに誕生した「榎津指物」が、大川家具の原点になったと言われています。
——熟達の船大工さんのたちの高い技術力が、大川家具の誕生につながっているんですね。造船で培われた技術は、大川家具のどのようなところに応用されているのでしょうか?
石橋 指物の他にも、荷物を運ぶために使う「長持」という箱物が作られていました。明治時代初期には「榎津箪笥」と呼ばれる、独特のデザインと優れた機能性を持った大川オリジナルのタンスが誕生します。
「榎津箪笥」は、日田で伐採された杉や桐を材料に手作りされた大型の箪笥です。他の家具産地では使われていない前蟻組と後蟻組と呼ばれる特殊な技法が用いられていたり、光も水も通さない完璧な機密性を保持していたりと、随所に職人たちの高度な技術が応用されています。船大工由来の高い技術力は、現代の職人さんたちへとしっかり継承されています。
家具生産地日本一の大川家具の取り組みと新たなチャレンジ
——「家具の街」として家具生産高日本一を誇る、大川市の現在の様子を教えてください。
石橋 大川市はここ5年以上に渡り、家具の出荷額が300億円を超え、日本一の家具産地の座に輝いています。出荷額は年々増加傾向にありましたが、コロナ禍でのステイホーム効果でさらに需要が高まっています。大川市には現在、木工製造業を営む会社が約200社あり、事業者や職人の数も日本一だと言われています。
さらに大川市には、材木店や塗料店、運輸業社など、家具の生産に必要な専門業社が多数集まっています。同じエリアに関連事業者が集積し、分業しているのでより効率的に生産性を高めることができるのは、家具の街大川市ならではの強みです。一枚板から張り物用の木材まで、街の中に何でも揃っていて、職人さんたちから「ベニア板1枚からすぐに持ってきてくれるよ!」という話をよく聞きますね。
最近では、人間用の家具を縮小して、ネコ用に作った「ネコ家具」がSNSで話題となり、若い世代や海外の方にも大川家具を知ってもらえる機会が増えました。さらにネコ家具をきっかけに、大川で家具職人になりたいと、全国各地から若い方の移住も増えています。
——家具の生産が大川市全体の活力源になっているんですね。大川市役所には「インテリア課」という、日本唯一の部署があるというおはなしを聞きました。インテリア課とは一体どのような部署なのでしょうか?
石橋 インテリア課は、日本で初めて誕生したカタカナ名のセクションです。通常は商工課や観光課に当たるんですが、家具の街らしさが一目でわかるように「インテリア課」という名前になりました。新型コロナウイルス感染症拡大以前には、日本一の家具のお祭り「大川木工まつり」を年に2回開催し、九州一円から毎年約20万人のお客様が集まるなど賑わいを見せていました。
近年はライフスタイルの変化や安価な輸入家具の影響で、国内市場の縮小も目立つようになりました。そこで大川市では、付加価値の高い家具づくりで差別化を図るため、歴史ある大川家具の技術や伝統を継承する職人の育成にも取り組んでいます。
職人の手によるモノづくりを復活させるため、職人としての基本技術を指導する「大川家具職人塾」の開講や、卓越した技能と見識などを有する職人の方を認定し、顕彰する「大川の匠」制度を導入しています。ふるさと納税の寄付金も大川家具の継承のために、大切に活用させていただいています。
若手の職人さんが育つことで、新たなブランドや会社も続々と誕生しています。
伝統産業としての大川家具を守るためには、変化やチャレンジも大切です。産官学連携の取り組みとして、九州産業大学の学生と企業とのコラボレーションした家具の開発も行っています。
——ふるさと納税の寄付金が、大川家具の承継と新たなチャレンジへの貴重な財源になっているんですね。最後に、全国のみなさんに大川家具の魅力を伝えるメッセージをお願いします!
石橋 今年のふるさと納税には、約110社の事業者さんのご協力の下、2800点以上の返礼品をご用意しました。歴史や伝統を大切に1点1点作られている、職人メイドの家具はもちろん、若手職人が作るトレンドや時代の雰囲気にマッチしたデザイン家具まで、種類と価格帯に幅があるのも大川家具の魅力です。ふるさと納税をきっかけに、大川家具をご自宅にお招きいただければと思います。